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2010年10月23日 (土)

第四則・胡子無鬚

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     四   毛唐にヒゲなし

惑庵がいう、「西の毛唐に、なぜヒゲがない?」

無門がいう---------思うにも真実、悟るにも真実。ここの「毛唐」もただひと目見てつかむがよい。「ひと目見る」といえば、もう二人だ。

 歌に--------- 
    おろか者には、
    夢説くまいぞ。
    毛唐のヒゲなど、
    よけいな苦労。

---------- 思い出すこと ----------

永松カズと木島佳苗
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 永松カズという人をご存知だろうか。日本人でありながら朝鮮戦争の渦中にソウルに滞在し、そのとき目の前で銃弾で血にそまった母の胸にいた子供を自分のもとに引き取り、育て始めたのを端緒として次々の子供を引き取り、実に130人もの孤児を引き取って、社会人として世に出した人です。床屋を中心に露天販売とかいろいろな職業につきながら、最後は売血までしながら子供達を育て続けました。韓国政府は彼女の功績を認め、彼女だけのための理髪士試験を実施したり、日本人としては異例の韓国独立記念日(8/15)の第一回光複賞を当時の朴大統領から授与されています。授賞式の日にもんぺと下駄履きで来たため、役員がせめて靴と洋服に着替えるように言ったところ、「そんなことを言うなら帰る」というので仕方なく、そのまま授与式を行ったということです。また周囲が、公的な孤児院にするように彼女に言うのですが、頑としてそれを受け入れようとはせず、大きくなった子供に手伝わせたりしながら理髪業の収入を中心としてこの活動を昭和58年に56才で亡くなるまでつづけました。
 彼女の伝記小説を読んだのですが、驚いてしまうことに彼女は何の躊躇もなく、次々と孤児を手元に引き取っていくのです。読んでいる側としては「おい、おい大丈夫かよ」と言いたくなるのですが、本当に何も考えていないように流れるように家族とそれに伴う負担を増やしていくのです。自分自身戦前の韓国で孤児になり、農奴として売られながら生活をしていたことから同じ境遇の孤児をみると放ってはおけなかったのでしょうけれど、まったく比較にならない裕福さにいる自分たちにはとても考えられないような行動を続けます。

 一方の木島佳苗をご存知でしょうか。最近話題になったあの連続練炭殺人事件の犯人とされる女性(34)です。婚活を利用して、次々と自然な事故死を装って少なくとも6人の男性を殺しています。いずれも結婚前の活動費として金を要求し、返済を迫られる頃になるとこれを殺害するという手順に従って犯行を続けています。
 実に日本史始まって以来の、殺人をつづけることによって生計を立てた人間だと思います。男性でも生活費を得るためだけに殺人をつづけた人というのはあまり記憶にありません。生活のために強盗を続け、殺人も犯したというのも、逃げるためやむを得ず殺してしまった場合が多く、その場合殺人の人数はそんなに多くはありません。かの戦前の有名な事件の説教強盗は人を一人も殺していません。
 彼女は警察で詐欺については「だまされる方が悪い」と言って、犯行を認めていますが、殺人についてはまだ認めていないようです。彼女を見ていると、実に自然で流れるように犯行をつづけています。普通の日常行動の連続の中に複数の男性の殺人が入っていることになります。

 永松カズは何も見返りを求めず功名心もなく、親切心から孤児の養育をつづけましたが、片方の木島佳苗は、自らの贅沢のためだけに、親切そうな外見を利用して殺人をつづけました。
 時代こそ違え同じ女性の、この大変な違いはどこからきたのでしょうか。まことに人間というのは、少女時代の一厘の心がけの差が、人生において千里の差を生むもので、この二人の差はこのことの好例ではないでしょうか。

2  実は 実は私は永松カズ女史にソウルで会ったことがあります。昭和42年(1967)韓国のホームステート中の友人に突然、彼女の店に連れて行かれました。彼女は小さな理髪店の奥まったほうにベッドで寝ていて、薄暗く感じた店には男の子が一人か二人働いていました。よく思い出せないのですが、何だか堪らなくなった私は持っていた2,3千円程度の金を彼女に渡そうとしたのですが、彼女は強く固辞してそれを受け取ろうとしませんでした。
そのときはまだ、光複賞を受け取る少し前のことだったと思います。
 彼女のことを詳しく知ったのはそれから25年くらいたって、新聞の小説として彼女の伝記が載ったときで、それまでそんな大変に偉い女性とは思っていなかったのです。右はそのとき頂いた名刺です(大韓民国SEOUOLの文字が見えます)。

 彼女達が、大なる善行や大なる悪行を行う前に、かたや平凡なモンペをはいた女性であり、かたや平凡な着飾った女性でした。
 大業を成し遂げる前の達磨もしかりであり、ただ飾り気のない青年で、年長になって鬚を蓄えるか蓄えないかは達磨の自由なのです。

PS1)木島佳苗に死刑判決が出ました。彼女は朝日新聞に手記を寄せ”嘘がどんどん通用していくので、収集がつかなくて困った”というようなことを言っていました。嘘ともう一つ、相手への気配りが彼女の特徴です。最後にだまされて4百万?だましとられた男性は”彼女との5日間は幸せでした”といっていました。彼の人生にとって4百万は安いもんだったと思います。

PS2)昨年(平成24年)末、神戸である平和な家族に取り付き、脅しを続けながら、贅沢な生活を続けた女性(角田美代子、64才)が留置場で自殺しました。少なくとも3人を殺害していますから、これも殺人を続けることを生活手段とした人間ということなります。また、女性でした。

  A15g001解説

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