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2010年10月19日 (火)

第八則・奚仲造車

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       無門関第八則・奚仲造車
 
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      八 奚仲の車

 月庵さまが坊主に問う、「奚仲発明の車が百、両輪をはずし、軸ものけたが、何事をしるためか?」

無門がいう---------これもすぐにピンとくるなら、目は流れ星、機転は稲妻だ。

  歌に ---------
     まわる小ぐるま、
     つい迷わされ。
     天地四方を、
     かなたこなた。

 ----------思いだすこと ----------

 この公案は、実力のある人がそれを発揮せずにボーッと日常の生活をしているさまを表しています。沢木興道は”坐禅をして何になる”という学生の質問に”何にもならない!”と言い切っています。つまり坐禅は本来の何もしていない人間に戻ることだということです。

 何もしないといえば、アフリカの黒人男性は一日中、酒を飲んでいて殆ど働かない人が多いらしのです。

 鈴木正行著「アフリカ漂流」(学文社)全6巻をよんでいますが、全部500ページ以上で各¥850とは驚きの値段の本です。
 実は、10年くらい前第4巻を購入して読んでいたのですが、ただ旅行の過程をズラズラ書いている印象にもかかわらず、読後に随分頭に残ってアフリカを知るためには、是非他の巻をあわせて全部読みたいものだとずっと思っていたところ、増補されて厚さが倍になり、しかも値段が据え置きになったもが並んでいるのを三省堂書店で見つけて、早速全巻をとりよせて読み始めました。
 これがなかなか面白いので、是非一読をお薦めします(感想、後述)。

 その中で、移動に主にバスを使用しているのですが、そのバスが3,4時間遅れるのはあたり前で、全く来ない可能性もあります。しかし、それを待っている現地の黒人は全く不満の顔を見せることなく、バスが途中で2,3時間とまるのも普通で、運転手が全く私用かなにかで運転台に戻ってこず、目の前で長話をしていても、全くあたり前の顔で待っているらしく、運転手と乗客の関係を不思議な関係と思うくらいだと書いています。故障で半日も動かなくてもただ黙って待っていますし、定刻より早く出発することもたまにあります。そして必ず目的地に着くかというとそうでも無いらしいのですから、全く文明人には考えられないこのとようです。
 著者によれば、黒人には時間の概念がないということです。来れば乗るし、来なければ乗らない、動かなければただ待っているということです。時間の概念については、それを空間次元に取り入れて解明したアインシュタインの上をいって、全くそれに捕らわれることなく自由らしいのです。明日の行動は明日決まるし、今日のことが影響するかもしれないが、影響したらそれにしたがってその日の行動が変わるだけということです(時計を持っていてもアクセサリーとしての意味しかなく、時計を見てどうということは全くしないそうです)。

 この日本で仕事をしていて、いつも思うのは「納期」っていったい何だろうということです。全く、納期というものを守るために部品を求めて右往左往し、徹夜さえしなくてはいけないのです。人間の決めたことなのだから、ただ延ばせば良いだけではないかと思うこともしばしばです。納期を延ばせば納品先が困るといったって、それがなければ困る動作を納品先で延ばせば良いだけではないでしょうか。そしたら、進歩や成長がとまるということですが、それも期間を延ばせばよいだけのことです。
 何も、そんなに単に人間が決めたことに縛られて、その人間を含めて大勢の人間がしゃかりきになって頑張ることはないのではないでしょうか。本当にくだらないことだと思うのですが、時計を発明した文明社会というものはこの自分の決めたスケジュールに縛られることを止めようとしないのです。
 止めたら、3月の予算の決算に間に合わないというなら、それをまた延ばせば良いではないですか。3月の決算ということも、それに縛られること自体もくだらないことだと思うのですが。それなしには成り立たない文明というのも全く困ったものです。

 この公案の奚仲造車も車のタガをはずして、バラバラになっている状態で、人間がぼーっと待機している状態の大切さを表してします。有能な人間が能力を発揮する前の状態は常にこの奚仲造車の示す状態にあるはずです。
 ですから時間についても、それに捕らわれることなく、アフリカの現地人のようにボーッとして、ただ明るくなったら働き(男はあまり働かないで遊んでいるらしい)、暗くなったら寝るようにしたいものです。
 これは文明社会の中で生きているものの空しい願望ではあります。

 ●「アフリカ漂流」(鈴木正行著)について、適切な感想がないようなので、是非ここで書きたいと思います。
 前述したように、10年ほど前、第4巻を買ったのですが、真っ黒な装丁で280ページのさえない外見の本でした。それで1年くらい放っておいたのですが、読む本がなくなって読み始めました。Afrika
 正直いって、事実と感想をストレートにぶつける感じで余り読みやすい文章ではないと感じました。
 とにかく読み終わって、ヘーっアフリカってこんな風なんだと思ったわけで、またしばらく放っておいたのですが、これが頭にズッと残っていて、アフリカを知るためには是非、もし全巻がみつかれば読んでみたいと思いはじめたのが数年もたってからのことでした。
 新聞ではアフリカの政治的な動きしか報道しないし、テレビも何か観光とか援助とかテーマを決めた取材側が絶対安全地帯にいる映像しか流さないので、アフリカの民衆の生活、つまりアフリカは実際どうなのかというのが分からないのです。
 テレビ映像の時、私はよくジッと背景の家や人々を見ていることが多いのですが、この本はまさに、そこに飛び込んで克明に記録するという姿勢を持ったもので、アフリカを知るには最適なものでした。

 Africa_4 特筆すべきは、著者鈴木正行氏の徹底した現地人の生活目線でものごとを捉えようとする姿勢、それ以前に同じものを食べて生活をともにしようとする姿勢です。現地マーケットでボーッとしながら現地人と会話をするのが好きだというのもすごい事だと思いました(数ある旅行記でそんな人はいませんでした)。
 香港の貧民地区に住んだ『転がる香港に苔は生えない』(大宅壮一ノンフィクション賞)の星野 博美さん(私の同窓です)にも感心しましたが、この鈴木正行氏の徹底した底辺思考にもホトホト感心しました。
 アフリカを知りたい人には是非お薦めしたい本です。20年経過していますが、決して古い情報ではありません(写真は上が旧版、下が新版です)。

 なにより、この本をきれいに装丁しなおし、増補し、同じ値段で再販した学文社にもつくづく感心しました。出版にきびしい状況の中、よく踏み切ってくれたものです。このことにあらためて感謝したいと思います。

  A15g002_3解説

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コメント

*車を初めて作った人が、折角作った車を壊してしまひ、 『車はどこに行ったのか』と捜してゐる。これは何故だか分かりますか?

あなたはこのクイズが判りますか?

車は何処に行ったかと問はれたら、「車はそれを作った人の心(アイディア)の中にあるのだ」と応へればよいのです。

日本は、明治時代に、「大日本帝國憲法」を作りました。この第1条には、「大日本帝國は万世一系の天皇之を統治す」とだけ、極めて簡潔に規定してゐます。言はば、これが「車」です。


しかし、昭和20年に大日本帝國は大東亜戦争に敗北し、進駐軍から憲法をGHQの言ふ通りに変更するやうに命令されました。そして昭和27年に、占領が終り、日本はまた独立と自由を回復しました。


この時です。「車」がどこに行ったのか分からなくなりました。それは日本国民の心の中にあったのですが、時の吉田茂首相はそのことが分かりませんでした。それで「車」を見つけられないまま、つまり大日本帝國憲法を復原せぬまま、ずるずると現在の令和2年4月に到ってをります。

ですから、安倍首相のすることなすこと、「車」を捜しまはるばかりです。武漢発の新型コロナウヰルスに起因する肺炎が蔓延しても、反射的に対策を執ることが出来ません。ここはひとつ、「車」をもう一度アイディアを元に作り直せばよいのです。つまり、憲法改正を先にやることです。コロナ対策も、経済対策も、それからで間に合ひます。


投稿: 北村維康 | 2020年4月19日 (日) 23時34分

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